01.アンテナ性能とICタグの大きさに影響する通信距離
読み取り距離や読み取り範囲は、RFIDリーダーのアンテナ性能とICタグの大きさによって変化します。
通常、RFIDリーダーの通信距離はアンテナサイズに影響しますが、アンテナが小さくても指向性や電波の送受信能力が高いものでは読み取り距離が長くなります。また、ICタグ・RFタグは本体(アンテナ)の大きさに比例して通信距離が伸びる傾向にあります。
ただし、RFIDの導入メリットは通信距離だけではありません。小型のRFIDリーダーは手に持ちやすく、小さなICタグなら対象物のサイズに関わらず貼れるため、実際にはRFIDを利用する環境や作業のしやすさ、導入効果のバランスを見ながら検討を進めるのが良いと言えます。
- 参考情報
- RFIDの読み取り範囲は、電波の照射方法(偏波特性)や指向性によってもその精度に違いが出ます。 詳しくは「RFIDとは(技術知識編)RFIDアンテナと読み取りの範囲」をご覧ください。
02.電波出力によって変化する通信距離
電波の送信出力は、RFIDリーダー本体の操作または連携するアプリの制御によって、その強さを調整することができます。
電波出力は下記の単位で表現されます。
- W(ワット)
- mW(ミリワット)
- dBm(デシベルミリ)
調整できる範囲は、後述する「特定小電力」および「高出力」の送信出力の上限、またはRFIDリーダーの種類によって異なります。利用するシーンに合わせて電波出力をコントロールすることで、スムーズな読み取りが可能です。
02-01.長距離・広域
電波出力を強くする
電波出力を強くすると、読み取りできる距離が長くなります。 日本の電波法における最高電波出力は「1W」です。RFIDリーダーの機種によっては通信距離が10メートル以上になるため、手の届かない場所にあるICタグも読み取ることが可能です。
また、電波出力を強くすることで、電波の照射範囲も比例して広がるため、広い範囲での読み取りが可能になります。
02-02.近距離・狭域
電波出力を弱くする
電波出力を弱くすると、読み取りできる距離は短くなり、範囲も狭くなります。RFIDリーダーの機種や電波出力の調整の仕方によっては、約1センチメートルまで読み取る範囲を制限できます。
例えば、商品タグを自動で読み取るセルフレジの場合は、他の商品まで読まないように電波出力はある程度弱く調整されています。また、ICタグにコード情報を書き込む際も、特定のICタグ以外への書き込みを防止するために電波出力を弱くします。
03.電波出力の種類
電波出力の分類
分類 | 特定小電力 |
高出力 |
---|---|---|
最大送信出力 | 250mW | 1W |
電波利用申請 | 不要 | 必要 |
電波利用料 | 不要 | 必要 |
通信距離(参考値) | 1メートル前後 | 数メートル |
- 参考情報
- 日本の電波法において、1Wを超える電波出力のRFID機器の使用は認められていないため、海外で利用されているRFIDリーダーを日本国内で利用する場合には注意が必要です。
- また、技術基準適合証明がされていない(技適マークがない)RFID機器の使用は、電波法違反となります。
03-01.特定小電力
電波出力:250mWまで
電波出力が250mW以下のRFIDリーダーは「特定小電力」に分類されます。この場合、通信可能な距離は1メートル程度に制限されます。
一方で、総務省への電波利用申請が必要ないため、申請手続きの手間がなく、受理されるまでの待機期間もありません。手軽にRFIDを利用したい場合や長距離読み取りが不要な場合は、「特定小電力」タイプのRFIDリーダーが選ばれます。
- 参考情報
- RFIDリーダーの機種によっては、同製品でも「特定小電力」と「高出力」の2モデルを選択できるRFIDリーダーが数多く存在します。
特定小電力に対応する製品
03-02.高出力
電波出力:1W(1,000mW)まで
250mWより上で1W(1,000mW)までの電波出力を持つRFIDリーダーは「高出力」に分類されます。通信距離は数メートルまで伸ばすことが可能です。
利用の際には総務省への電波利用申請と利用料が必要になります。なお、使用時に電波出力を250mW以下に調整したとしても申請が免除される訳ではありません。