01.RFIDアンテナの偏波特性とは?

偏波とは、RFIDリーダーのアンテナから照射される電波の振動方向のことを言います。

大きく分類すると円偏波」「直線偏波」の2種類が存在します。それぞれの電波の届き方が異なるため、利用目的に適した偏波特性を持つRFIDリーダーを選択することで、より効率的にRFIDのポテンシャルを発揮させることができます。

01-01.読み取り範囲の広い 「円偏波」

「円偏波」はアンテナから電波をらせん状に照射します。「直線偏波」と比べて通信距離は短くなりますが、ICタグの読み取り漏れが比較的少ないのが特徴です。ICタグの取り付け方の影響を受けづらく、RFIDリーダー(アンテナ)に対してICタグが正面を向いている場合はもちろん、逆を向いている、上を向いている、他のものと重なっている場合でも、安定して読み取ることが可能です。

この技術は、人工衛星や衛星放送などの衛星通信でも利用されています。

照射イメージ(円偏波):螺旋状に電波を照射します

「円偏波」に適した利用シーン

利用シーン(アパレルショップ):商品を手に取らなくても離れた位置から読み取れます

アパレルショップ:商品の棚卸

積み重なった衣類に取り付けられたICタグ(商品タグ)は、向きがバラバラで重なっていますが、「円偏波」タイプのRFIDリーダーなら回り込むように電波が届くため、漏らさず読み取れます。

利用シーン(倉庫業):開封しなくてもダンボールの中にあるICタグを読み取れます

倉庫業:入出庫検品

入出庫時の検品作業には、ICタグの向きなどを気にせずに読み取れる「円偏波」タイプのRFIDリーダーがおすすめです。ダンボールを開封せずに読み取れるため、作業時間の短縮に繋がります。


01-02.長距離読み取りが得意 「直線偏波」

「直線偏波」の電波はRFIDアンテナから波状にまっすぐ照射されます。指向性が高く、電波の照射角度がICタグの向きと一致すると、円偏波よりも読み取り距離が長くなります。

ただし、照射角度がずれてしまうと、読み取り距離は短くなってしまうため、ICタグの取り付け方には注意が必要です。

照射イメージ(直線偏波):波状にまっすぐ電波を照射します

「直線偏波」に適した利用シーン

利用シーン(製造業):手の届かない位置にある大型機械などの管理情報も読み取れます

製造業:機器のメンテナンス管理

大型の製造機械のメンテナンス管理をRFIDで行う際は、ICタグの取り付ける向きを固定できるため、離れた位置から読み取ることができる、通信距離の長い「直線偏波」がおすすめです。

利用シーン(建設業):大きな管理物を陳列している広いエリアでも効率的に読み取れます

建設業:資材管理

屋外作業が中心となる建設業では、管理する資材が大型のため「直線偏波」の飛距離が求められます。ICタグの取り付け位置に気をつければ、複数の資材を効率良く読み取ることができます。

02.アンテナの指向性について

指向性アンテナ

電波を送受信する時、一定方向に感度が良くなっていることを「指向性」と呼びます。前述の「円偏波」タイプや「直線偏波」タイプは、指向性の特徴を持つ「指向性アンテナ」です。この特徴を持つRFIDリーダーは、アンテナを向けた方向へ通信距離を伸ばすことが可能です。

一定方向に感度が強い「指向性アンテナ」

無指向性アンテナ

無指向性」は平面上に360°電波が照射されます。アンテナの向きに依存せずに電波を照射することができるため、正面だけでなく、横、後方の読み取りをカバーし、読み取り漏れを起こしにくい特徴があります。

一方で、全方向に読み取るため、どの方向に向かって読み取っているのかがわかりづらく、探索には不向きです。

平面上に360°電波を照射する「無指向性アンテナ」